センター2017物理追試第3問B「水面波の干渉」

■2つの波の干渉条件

物理が苦手な文子
水面波の干渉の問題ね。

物理が得意な秀樹
波源Aから出ている波と,波源Bから出ている波を区別するために,ちょっと色分けをしてみようか。

物理が苦手な文子
分かりやすくなったわね。この緑とオレンジの線は,"山"と考えていいの?

物理が得意な秀樹
実はよく分からないんだ。この線が何なのか,問題文のどこにも書かれていないからね。まぁ,山だと考えて問題はないんじゃないかな。

物理が苦手な文子
勝手に山としてもいいの?

物理が得意な秀樹
問題はないんだけど,実はこの線はこの問題ではあまり意味がないんだ。だから説明も書かれていないんだね。

物理が苦手な文子
意味がないってどういうこと?

物理が得意な秀樹
「水面波の干渉の話だよ」ということを分かりやすく図にしただけで,無くてもいいんだ。だから取っちゃうよ。

物理が苦手な文子
これでも問題が解けるの?

物理が得意な秀樹
まぁ問題を見てみようか。このA,B2つの波源から発生した波が弱めあう条件を表す式を選べば良いんだね。

物理が苦手な文子
何か聞いたことがある表現ね。

物理が得意な秀樹
2つの波が強め合ったり,弱めあったりすることを「干渉」っていうけど,一般的に干渉して強め合う条件とか,弱めあう条件って覚えていないかな?

物理が苦手な文子
「干渉条件」っていうやつね。確かこんな感じよね。ちなみに,m=0,1,2,3‥で,\lambdaは波長ね。

物理が得意な秀樹
素晴らしい!そうだね。「経路差」がどんな条件を満たしているか,が大切なんだよね。ちなみに右辺はこんな感じに変形することもあるね。

物理が苦手な文子
「半波長の偶数倍」,「半波長の奇数倍」という言葉は聞いたことがあるわ。

物理が得意な秀樹
変形すればどちらも同じ式だということが分かるね。この問題の選択肢を見ると,今はとりあえず最初の方の関係式で良さそうだね。

■経路差は?

物理が苦手な文子
あとは「経路差」を式で表すのね。「経路差」って単純に波源から,観察点までの距離の差よね。

物理が得意な秀樹
そうだよ。

物理が苦手な文子
それじゃあ,今はL_B-L_Aかな?

物理が得意な秀樹
確かに図ではL_AよりL_Bの方が長くなっているけど,問題文を読む限り,観測点の場所は図で指定されている場所とは限らないよね。

物理が苦手な文子
えー,そういうこともあるの?

物理が得意な秀樹
そういうこともあるよ。選択肢を見ると経路差がL_B-L_Aになっているものは無いから,違うって気がつくと思うけどね。

物理が苦手な文子
ということは,L_AL_Bのどちらが長いか分からないということだから,経路差は絶対値を使うのね。

物理が得意な秀樹
そうだね。それじゃあ,答えはどうなるかな?

物理が苦手な文子
求めたいのは弱めあう条件ね。n=0,1,2,…だから,こうかな?

    $$ |L_A-L_B|=(n+\frac{1}{2})\lambda$$

物理が得意な秀樹
正解だ。答えは⑥だね。次は問4だ。

■振動数が変わる

物理が苦手な文子
L_AL_Bが具体的に与えられたのね。

物理が得意な秀樹
実はその具体的に与えられた場所が,最初の図の「観測点」なんだよ。

物理が苦手な文子
えー!そんなの気づかなかったわ。

物理が得意な秀樹
気づかなくても全く問題は無いんだけど,図を使うとイメージしやすいよね。同心円になっている線が山だと考えると,ちょうどL_Aが4.5\lambdaL_Bが5\lambdaになってるでしょ。

物理が苦手な文子
確かになってるわ。

物理が得意な秀樹
ところで,その観測点は,強め合う点か,弱めあう点か,その他の点か,どうだろう?

物理が苦手な文子
えっと,経路差を計算してみればいいのよね。

    \begin{eqnarray*}|L_A-L_B|&=&|\frac{9}{2}\lambda-5\lambda|\\&=&\frac{1}{2}\lambda\end{eqnarray*}

物理が苦手な文子
経路差が半波長だから,問3で出した式で,n=0にあたるわね。つまり,弱めあう点ね。

物理が得意な秀樹
そうだね。現在は弱めあう点なので,振動数を変えるといつかは強め合う点になるはずなんだ。なので,そのときの振動数f\primeを求めなさいということだね。

物理が苦手な文子
振動数を変えても,この同心円の図は変わらないわよね。

物理が得意な秀樹
確かに図の中に振動数を表す要素はないけど,振動数を変えると,他にも変わる量があるよね。

物理が苦手な文子
何?

物理が得意な秀樹
まず,問題文に「同じ位置で観測を続けながら」とあるので,観測点の場所は変わらないよね。

物理が苦手な文子
問題文の最後には「水面波の速さは振動数によらず一定である」とあるから波の速さも変わらないわね。。

物理が得意な秀樹
ということは,波の分野で良く出てくる式v=f\lambdaを考えると,波長はどうなるかな?

物理が苦手な文子
速さが一定で,振動数が大きくなると,波長は小さくなるわね。

■同心円を描いてみる

物理が得意な秀樹
そうだね。ちょっと波長を短くした図を描いてみるよ。

物理が苦手な文子
えっ,何か変わった?

物理が得意な秀樹
ちょっと分かりにくいけど,どちらの円の半径も少し小さくしたんだ。波長が短くなるということは,山と山の間隔が短くなるということだからね。もちろん,観測点の位置は動かしてないよ。

物理が苦手な文子
波長が短くなると,円の半径が小さくなるのは分かるわ。ただ,前の図との違いは分かりにくいわね。

物理が得意な秀樹
最初の図では観測点は緑色の円の上にあったけど,この図ではオレンジ色の円の上にあるよね。

物理が苦手な文子
なるほど。観測点がどうなっているかに注目すれば良いのね。確かに2つの図を並べて比較すると,最初の左の図よりも,右の図の方が円の間隔が狭いわね。

物理が得意な秀樹
そうでしょ。ただ,観測点で強め合うためには山と山が重なるか,谷と谷が重なっている必要があるんだ。まだ重なっていないので,もう少し円の半径を小さくしてみようか。

物理が苦手な文子
なかなか観測点で山と山,谷と谷が重なる感じにはならないわね。

■経路差を図で考えてみる

物理が得意な秀樹
そうだね。ちょっと戻って考えてみようか。まずこの長さを経路差としようか。

物理が得意な秀樹
最初,波の振動数がf,波長が\lambdaのとき,経路差は半波長だったんだよね。

物理が苦手な文子
そうね。

物理が得意な秀樹
波長が短くなって\lambda^\primeになったとき,経路差がどうなれば強め合う点になるかな?

物理が苦手な文子
強め合うためには,「経路差=n\lambda^\prime」であればいいのよね。今の場合は経路差が0になることはないから,次に強め合うのはn=1ね。

物理が得意な秀樹
その通り。図で表すとこんな感じだ。

物理が得意な秀樹
流れをまとめるとこんな感じだ。

 

 

物理が得意な秀樹
ここまでは分かるかな。

物理が苦手な文子
分かるわ。

物理が得意な秀樹
経路差であるL_B-L_Aは変わらないから,まとめに書いた2つの式を合わせると,こうなるよね。

    $$\frac{1}{2}\lambda=\lambda^\prime$$

物理が苦手な文子
そうね。

物理が得意な秀樹
あとは,この2つの式

    $$v=f\lambda$$

    $$v=f^\prime \lambda^\prime$$

物理が得意な秀樹
も成り立つから,代入してみてくれる?

物理が苦手な文子
ということは,こういうこと?

    $$\frac{1}{2}\times\frac{v}{f}=\frac{v}{f^\prime}$$

    $$f^\prime = 2f$$

物理が得意な秀樹
それが答えだね。⑤が答えだ。ちなみに,振動数が2倍になるということは,波長が半分になるということで,観測点が強め合うときの同心円の図を描いてみると,こんな感じになるよ。

物理が苦手な文子
円と円の間隔がかなり狭くなったけど,確かに観測点でどちらの波も山になっているわね。