理科は好きだけど、それほど役に立たないと思っている

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小学校学習指導要領実施状況調査

2015年2月12日に「小学校学習指導要領実施状況調査」が、報道発表されました。詳しくは国立教育政策研究所のサイトをご覧ください。調査を実施したのは、2013年の2月から3月で、その時の小学生が対象です。その中から理科の調査結果を中心に見てみます。

2003年の前回調査と比較して、正答率は上がっている

理科について、前回と全く同じ問題が出題されていて、その正答率を比較したのが次の表です。

 同一問題の数  前回を有意に上回るもの 前回と有意に差がないもの 前回を有意に下回るもの

29問

(36問)

14問

(18問)

7問

(7問)

8問

(11問)

上段の数字:「同一問題のうち、前回調査と学習する学年が変わっていないもの」
下段の( )内の数字:「上段の数字に加え、学年を越えて移行した事項に関する同一問題を含めたもの

下回った問題もありますが、上回った問題の方が多く、概ね良い結果だと思います。

原因に関する識者の意見は分かれています

このことの原因について、識者は異なった意見を出しています。そもそもこの調査は、現在の学習指導要領が前の学習指導要領と比較して、良かったところ、改善点を把握して、次の学習指導要領改定に活かそうという趣旨です。

朝日新聞によると、現在の学習指導要領作成に関わった梶田叡一・奈良学園大学長は、

学習内容を増やした指導要領改訂には、学校と勉強は大事だというメッセージをこめた。今回のテストはそれが子どもの学習に浸透してきた結果だろう。詰め込みで勉強を嫌いにならないか心配だったが、こなせている様子がわかりほっとしている。今度の新指導要領の議論に生かしてほしい。

と話しています。つまり、いわゆる「脱ゆとり」の学習指導要領が上手く機能しているということです。

一方、前の学習指導要領、いわゆる「ゆとり教育」を進めた元文部科学省官房審議官の寺脇研・京都造形芸術大教授は、

知識をどう役立てるかは、1992年に生活科を始めた時からの発想。思考力の育成も「総合的な学習の時間」を設けた2002年以来の方針だ。子どもがそうした力をつけるための努力を、先生が時間をかけて続けてきた成果が表れたのではないか。「脱ゆとり」になって急に力がついたわけではない。

と話しています。つまり、前回の「ゆとり教育」の成果だということです。

教育の評価は難しい

教育を評価するというのは非常に難しいので、どちらかが正しい、というのは分からないです。つまり2003年の調査と2013年の調査では、結果に差があるのは確かですが、原因が現在の学習指導要領なのか、前回の学習指導要領なのか、または全く別の所に原因があるのか(そもそも10年も差があれば、時代背景も、学校以外の学習環境も、生活環境も変化しています)、分からないですね。全ての環境を同じにして比較調査ができないですから。財務省が教育予算を削ろうとするのも、教育に対する評価方法がいろいろあるからです。

教育というのは、テストをするなどしてすぐに点数化できる評価もあれば、ノーベル賞のように教育を受けてから何十年も経ってから評価を受けることもあります。このようなことが、教育の難しい所でもあり、楽しいところでもあります。

理科は他の教科と比較すると、将来役に立たない?

役立つ4教科

「小学校学習指導要領実施状況調査」で、理科が将来役に立つかどうかを聞いた結果です。(小学校6年生のデータですが、5年生も同じ傾向です。)以前紹介した「理科は将来役に立たないのか?ーH24全国学力・学習状況調査」と同様の結果です。4教科の中で、役に立つと答えた児童は理科が一番少ないです。やはり、このあたりを何とかしなければならないですね。

前回と比較すると良くなっている

役立つ理科

10年前の前回の調査と比較すると、理科が役に立つと考える児童は大幅に伸びています。これはすばらしいことですね。小学校の先生の実践の日々の積み重ねだと思いますし、理科の大切さを広げる活動をこつこつとやってきた人たちのお陰だと思います。(私もそのほんの一端を担っていたとすると嬉しいです)

ただ、5年生から6年生に上がると、役立つと考える児童は減るのです。どうしてなのでしょう?年齢が上がるとより理科が役に立っている場に触れやすいと思うのですが、私たちもまだまだやるべき事があるということだと受け止めます。

やっぱり「理科が好き!」

好きだ4教科

好きかどうかでいうと、4教科の中では理科が一番好きなんですね。「理科は役立たないけど、好き!」ということです。小学生にとっては、実験や観察があることが好きになる理由なのでしょうか。とにかく、好きであることは大切なので、この傾向が維持されるような努力が必要ですね。

理科好きは増えている

好きだ理科

10年前の調査と比較すると、「理科が好き!」な児童の割合も増えています。とても良い傾向だと思いますが、こちらもまた、5年生から6年生に上がると、「理科が好き!」な児童の割合が減っています。この調査にはありませんが、中学生に上がるとさらに減って、高校に入ると「理科が好き!」な生徒はものすごく減ります。学習内容も高度化するので仕方のない面もあります。やるべきことはまだまだあります!

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