「わかりやすい」授業より、「好きになる」授業の方が効果的

TIMSS2011

TIMSS2011の調査結果から紹介します。

(TIMSSについては「理科を使う職業に就きたい中学2年生は、世界で最も少ない」にも記事を書きました。

 TIMSS2011の詳しいデータは国立教育政策研究所「IEA国際数学・理科教育動向調査の2011年調査(TIMSS2011)」をご覧ください。)

「私の先生はわかりやすい」と思っている生徒ほど、点数が高い

TIMSS2011では、理科の授業のわかりやすさを4段階で調査しています。その結果は、数字が並んでゴチャゴチャしているので、「わかりやすさ指数」を作りました。わかりやすさ指数

  •  強くそう思う     4点
  •  そう思う       3点
  •  そう思わない     2点
  •  まったくそう思わない 1点

として、割合(%)をかけてその総和を「わかりやすさ指数」としました。数値が大きい方が、わかりやすいということです。中学2年生のデータで、データが比較できる数カ国を並べました。

国際平均が一番上に来ているのは、他にも多数の国が参加していて、それらの国のわかりやすさ指数が大きいからです。これらの国の中で、日本は下から3番目です。世界的に見ると、日本の中学校の授業は、生徒から見ると、あまりわかりやすくないという結果です。あくまでも客観的な比較データではなく、それぞれの国の生徒の評価なので、日本の先生の技術が低い、という意味ではありません。

もう少し細かく見てみます。「先生はわかりやすいか」という質問に対する4つ選択肢と、それぞれの選択肢を選んだ生徒の平均点の関係をグラフにしてみました。

私の先生はわかりやすい

   「私の先生はわかりやすい」と思っている生徒の方が、思っていない生徒よりも点数が高くなっています。当たり前といえば、当たり前の結果です。

しかし、各国のわかりやすさ指数と平均点の関係は興味深いものになっています。

「私の先生はわかりやすい」と思っている国ほど、平均点が低い

わかりやすさ指数と平均点

かなりばらついているのですが、シンガポールを除くと、おおよそわかりやすさ指数が大きい国ほど点数が低いという結果になっています。つまり、授業がわかりやすい国ほど点数が低いのです。

わかりやすいかどうか、というのはあくまでも生徒の印象なので、それぞれの国によって「わかりやすさ」の基準が違うのかもしれません。

わかりやすいことは大切だけど、わかりやすさを追い求めてはいけない

2つのグラフからわかるのは、その国の中では「授業がわかりやすい方が、点数が高い」けれども、「授業がわかりやすいと生徒が感じている国の点数は、良くない」ということです。

経験上良くあるのですが、生徒が「わかった!」と言ってもテストをやってみると、点数が取れないことがあるのです。逆に生徒にとって難しく、わかりにくいと感じる分野でも、生徒が努力すれば理解できるようになります。わかりやすさを追い求めると、結果的に生徒の身になっていない事もあるので、生徒が試行錯誤するようなことも必要です。

例外はシンガポール

この調査で明らかに他の国と違う傾向が出ているのが、シンガポールです。授業がわかりやすくて、点数も高いという他の国にはない傾向です。

理科を使う職業に就きたい中学2年生は、世界で最も少ない」の記事にも書きましたが、シンガポールの中学2年生は、理系の仕事に就きたいと考えている割合がかなり高いのです。これが大きな影響を及ぼしているのかもしれません。授業をどのように行っているのかも気になります。いつか勉強したいです。

「理科が好き」な生徒ほど、点数が高い

好きだ指数

理科の授業が好きかどうかのデータで、こちらも4段階で調査しているので、「理科が好きだ指数」として、計算して並べました。数字が大きいほど理科が好きな割合が高いということになります。下位3カ国は「わかりやすさ指数」と同様でした。

日本の小学4年生の調査では、もう少し「理科が好き」な児童の割合は高いのですが、この表の中学2年生は、かなり理科離れが進んでいます。

先ほどと同様に、「理科は好きか」という質問に対する4つ選択肢と、それぞれの選択肢を選んだ子どもの平均点の関係をグラフにしてみました。

私は理科が好きだ

やはり、理科が好きなほど平均点が高くなっています。これも予想通りの結果です。

「わかりやすい」授業より、「好きになる」授業の方が効果的

そこで、先ほどの「私の先生は分かりやすい」のグラフと、この「私は、理科が好きだ」のグラフを比較します。

私の先生はわかりやすい

 

私は理科が好きだ]

「私は、理科が好きだ」のグラフの方が傾きが急になっています。ということは、点数に大きく関係しているのは、「わかりやすさ」よりも「理科が好きかどうか」ということを表しています。この傾きの違いはどの国もほとんど同じです。つまり、先生にとって大切なのは、「わかりやすさ」を求めるよりも、「理科が好きになるように」授業を展開することではないでしょうか。その方が効果があるということをデータが示しています。

「理科が好き」な生徒が多い国ほど、点数が低い

好きだ指数と平均点

 傾向は先ほどの「わかりやすさと平均点」の関係と同じです。シンガポールを除くと、理科が好きな生徒が多いほど、平均点が低くなっています。

保護者の皆さんは、ぜひ理科を好きになってください

理科について、高度な理解が求められると、生徒は「わかりにくい」と感じたり、「理科が好きではない」ということになるのかもしれません。国によって求められる理解の範囲が異なるのでしょう。

この記事は先生向けの話しが多くなりましたので、保護者の皆さんができることを整理します。子どもにとって「理科が好き!」なことが大切であると、このTIMSS2011のデータも示しています。ぜひ子どもが「理科が好き!」になるように、保護者の皆さんも「理科が好き!」になってください。私も応援します!


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