科学の話をすることが、科学技術に関心を持たせる圧倒的な近道

この記事は、科学技術・学術政策研究所早川 雄司氏が2014 年9 月に発表した情報を参考にしています。

詳しくは「国民の科学技術に対する関心と科学技術に関する意識との関連」をご覧ください。

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科学技術に関心がある大人は、小中学校では理科が好きだった

科学好きの理太郎
理子、面白い調査結果を見つけたよ。
科学が苦手な理子
何?
科学好きの理太郎
科学技術に関心がある大人は、小中学校では、理科が好きだったんだって。

科学が苦手な理子
そんなの当たり前じゃないの?
科学好きの理太郎
まぁ、これ見てよ。

コレスポンデンス分析

好きだった教科

科学が苦手な理子
なにこれ?
科学好きの理太郎
20歳以上の大人に聞いたんだけど、この図の中にあるA〜Eは科学技術に対する関心の程度を表しているんだ。Aが科学技術に強く関心があるのね。
科学が苦手な理子
じゃあ、Eは科学技術にほとんど関心が無いということね。他の円は何?
科学好きの理太郎
その教科が好きだと答えた人だよ。大きな円ほど好きだと答えた人の割合が大きいということだね。
科学が苦手な理子
で、このグラフはどうやって理解すればいいの?
科学好きの理太郎
円が近いと関係があるということを示しているんだ。例えば、国語の円と音楽の円が重なっているので、国語が好きな人と、音楽が好きな人は、とても似た傾向があるということだよ。
科学が苦手な理子
国語が好きな人と、音楽が好きな人が同じなの?
科学好きの理太郎
「科学技術に関心がある」ということに対して、国語が好きな人と、音楽が好きな人で傾向が同じということね。ちょっと分かりにくいけど、同じ人ではないんだよ。音楽が好きな人はみんな国語が好きっていうことはないでしょ。現に僕は音楽は好きだけど、国語はちょっと苦手だな。

コレスポンデンス分析では、軸に意味はない!?

科学が苦手な理子
縦軸と横軸は何を表しているの?
科学好きの理太郎
グラフを描くときは、縦軸、横軸が何を表しているのかを明確にするのが大切だよね。でもこのグラフは、「第1成分」「第2成分」と書かれているだけで、よく分からないね。
科学が苦手な理子
しかも、目盛りが無いのよ。
科学好きの理太郎
そうなんだよね。このグラフは「コレスポンデンス分析」っていうみたいなんだけど、実は僕もよく分からないんだ。
科学が苦手な理子
なんだ、理太郎も分からないの。
科学好きの理太郎
調べてみたんだけど、この図の縦軸、横軸にはあまり意味が無いみたい。
科学が苦手な理子
えーっ、意味が無いの?
科学好きの理太郎
この分析で分かるのは、距離が近いと関係が深いと考えられる、ということなんだ。
科学が苦手な理子
遠いとあまり関係が無いということかな。
科学好きの理太郎
その通り。一般的なコレスポンデンス分析では、距離に意味があって、軸が意味を持つとは考えないんだって。だけど、この分析では、A〜Eは単純に科学技術に対する興味の程度を表していて、それが横に並んでいるので、この場合は右に行くほど科学技術に興味がある、と考えていいんじゃないかな。
科学が苦手な理子
なんとなく分かるんだけど、Eだけ上に外れている感じがするんだけど。
科学好きの理太郎
そうなんだよね。なので、厳密にはやっぱり軸には意味がないんだよ。だけど、なんとなく傾向はあるという感じでどうかな?
科学が苦手な理子
距離に対応したイメージが伝わればいいのね。

「理科」好きとは関係が強いけど、「算数/数学」好きとは関係が強くないと書かれているのはなぜ?

科学好きの理太郎
もう一度さっきのグラフを見てみよう。

好きだった教科

科学好きの理太郎
このグラフは、「国民の科学技術に対する関心と 科学技術に関する意識との関連」という論文のものなんだけど、執筆者の科学技術・学術政策研究所早川雄司氏はこのグラフの見解についてこう書いてるんだ。

小・中学校時に学習した教科において、科学技術に対する関心が高い層ほど「理科」好きとの関連が強く、「算数/数学」好きにあっては、「理科」好きほど科学技術に対する関心との関連が強くない(図Ⅰ)。

科学が苦手な理子
あれ?科学技術に対する関心が高い層って、Aのことよね。Aに近いのは「理科」よりも「算数/数学」よね。
科学好きの理太郎
そうなんだよね。ちょっと考えてみたんだけど、Bに対しては「理科」よりも「算数/数学」の方が近いよね。さらに、C、D、Eについても「理科」は遠いんだよ。
科学が苦手な理子
科学技術に興味がない層に対して、「理科」好きな層は遠いってことね。
科学好きの理太郎
結果的に、右に行くほど科学技術に関心があると考えていいみたいなんだよね。
科学が苦手な理子
そういうことなのね。でも、算数・数学って、科学技術と関係が深そうだけどね。
科学好きの理太郎
そう思うよね。もちろん「算数・数学」が好きな人と「科学技術」に関心がある人が関係がないっていうことではないよ。この調査結果ではあくまでも「理科」が好きな人の方が、より「科学技術」に関心が強いということだね。

この調査の目的は?

科学が苦手な理子
そもそもこの調査は、何のために行われたの?
科学好きの理太郎
この調査の目的には、こう書かれているんだ。

科学技術と社会との関わりがますます密接なものになっており、今後さらなる科学技術の発展には、国民の科学技術に対する理解と支持が不可欠であり、科学技術と社会との信頼関係の構築が重要となっている。そのためには、国民が日頃から科学技術を巡る諸問題について高い関心を持つ必要がある。

科学が苦手な理子
「科学技術」って言われると、難しいから分からない、って思っちゃう。
科学好きの理太郎
これからの日本、これからの世界を考えると、科学技術を発展させる人たちを育てることはとても大切だよね。そして、発展した科学技術を使う側の人たちにも、科学技術に関心を持ってもらう必要があるということで行われた調査なんだ。
科学が苦手な理子
そのためには、小中学校のときに、理科を好きになってもらうことが重要だということなのね。
科学好きの理太郎
そうだね。高校の結果も見てみよう。

科学技術に関心がある大人は、高校時代、物理、化学が好きだった

高校で好きだった教科

科学が苦手な理子
右に行くほど科学技術に関心があると考えると、「物理」や「化学」が好きな人が、より科学技術に関心がありそうね。「理科」って何?
科学好きの理太郎
年代によって科目名が違うんだけど、「理科基礎」とか「理科総合」みたいだよ。
科学が苦手な理子
私が大学受験のために勉強した「生物」はまぁまぁってとこかな。「地学」はちょっと離れているけど、どう見ればいいんだろう?
科学好きの理太郎
A、Bとの距離がちょっとあるけど、それでもD、Eからの距離がすごく遠いので、やっぱり科学技術に関心があると考えていいんじゃないかな。この調査の他の設問に、「資源・エネルギー問題」とか、「地球温暖化」のような「地学」、「理科基礎」に関係が深いテーマがあって、その結果、科学技術に関心があるという結果となって表れているだと思うよ。

数学が好きな人は科学技術に関心がない?

科学が苦手な理子
小中学校の結果より、「数学」と科学技術の関心が弱くなってる感じがするわ。
科学好きの理太郎
そうなんだよね。もちろん、数学が好きな人で、科学技術に関心が強い人もいるでしょう。それと同じくらい科学技術に感心がない人もいるということかな。
科学が苦手な理子
逆に、「物理」や「化学」が好きだった人は、科学技術に感心がない人は少ないということね。
科学好きの理太郎
そういうことだね。

小中学校の志向はやっぱり理科・科学に関することが大切!

経験や志向

科学好きの理太郎
今度は、科学技術への関心と小中学校の頃の経験の関係だよ。「あこがれの科学者がいた」とか、「科学者になりたい」とか、線上にあるのでちょっと見にくいけど「プログラミングをしていた」など、やっぱり科学的なことが右側にあるね。このグラフも右側にあるほど科学技術に感心が高いと見て良さそうだね。
科学が苦手な理子
割と右側にあって人数が多いのは、「百科事典/図鑑が好き」とか「理科雑誌や付録が楽しみ」という項目ね。やっぱり私はどれもあまり経験がないかな。
科学好きの理太郎
僕は結構当てはまるよ。大人になった今でもときどき「大人の科学マガジン」っていう付録付きの科学雑誌を買っちゃうもんな。
科学が苦手な理子
気になるのは、「学習塾に通っていた」っていう経験のある大人が、科学技術にあまり関心が無さそうなんだけど、本当にそうなのかな?
科学好きの理太郎
それは難しいね。CとかDの付近に集まっている項目は、科学技術に関心がある人もない人も混ざっている感じななんじゃないかな。Cに近いと半々くらいで、Dに近づくと科学技術に感心のない人の方が少し多くなる、ということだね。
科学が苦手な理子
そうか。で、Eに近いと科学技術に関心がない人の割合がかなり多いということね。確かに、「楽器を習っていた」とか「スポーツ教室に通っていた」という人は科学技術に感心のない人が多そうだもんね。

子どもと理科や科学の話しをしよう!

親との関わり

夏休みの自由研究を一緒にするのはダメみたい

科学好きの理太郎
コレスポンデンス分析の最後は、科学技術に対する関心と、小中学校の頃の親との関わりだよ。
科学が苦手な理子
すごいわね。「理科や科学の話をした」という項目がダントツで右側にあるわ。
科学好きの理太郎
円が小さいから人数は少ないんだけど、本当にダントツだね。
科学が苦手な理子
科学技術にあまり関係の無さそうなところだと、「社会の出来事の話をした」というのは割といいところにあるわね。
科学好きの理太郎
面白いね。科学技術に関係がなくてもいいんだね。社会の出来事を話すって大切なんだね。
科学が苦手な理子
反対にダメなのは「一緒にゲームをした」というのは分かるけど、「夏休みの自由研究を一緒にした」というのは、あまり良くなさそうね。
科学好きの理太郎
手伝ったりするのは良くないんだね。当たり前なのかもしれないけど、子どもの自主性に任せた方がいいんだね。
科学が苦手な理子
なかなか奥が深い分析ね。

この調査の続きを「新聞を読んで、読書もして、いろんな施設へ行こう!」に書きました。よろしければ、ご覧ください。

コメント

  1. […] また、この記事は当サイトの「子どもと科学の話をしよう!」の続きです。よろしければ、そちらを先にお読み下さい。 […]

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