センター2017物理第3問A「くさび形空気層での光の干渉」

 

動画解説をYouTubeにUPしました。動画での解説と、このサイトでの解説を少し変えましたので、ぜひどちらも参考にしてください。


■必要な情報を文字で置けるかが勝負

物理が苦手な文子
くさび形空気層」っていうのが,図の真ん中の直角三角形の部分ね。

物理が得意な秀樹
この部分は実際はすごく薄いんだよ。そして,問題文にある通り,真上から見ると,明暗の縞模様になっていて,隣り合う明線の間隔がdなんだね。

物理が苦手な文子
そこまでは見たことあるので分かるんだけど,明線の間隔dをどうやって求めればいいか,分からないわ。

物理が得意な秀樹
確かにこのくさび形空気層の問題はよくあるんだけど,いきなり明線の間隔を求めるのはなかなか厳しいね。自分でいろいろと決めなきゃダメなんだ。まずは順番に考えていこうか。

物理が得意な秀樹
まず,左端からm番目の明線までの長さをx_mとして,その位置での空気層の厚さをDとするよ。

物理が苦手な文子
図の通りということね。ただ,このx_mDは自分で決めなきゃダメなの?思いつかないわ。

物理が得意な秀樹
そうなんだよね。文字は違うかもしれないけど,教科書には必ず出ている計算の流れなので,やっぱり自分で決めれるようにしておいたほうがいいね。

物理が苦手な文子
仕方ないのね。

物理が得意な秀樹
逆に言うと,「くさび形空気層の干渉の公式」みたいな式を覚えるより,この流れを理解するほうがずっといいよ。

■明線の条件,暗線の条件

物理が苦手な文子
分かったわ。次はどうするの?

物理が得意な秀樹
空気層の厚さがDで明るくなる条件を求めよう。

物理が得意な秀樹
図のように空気層の上面で反射した光と,下面で反射した光が干渉するんだよね。

物理が苦手な文子
そこは分かるわ。

物理が得意な秀樹
干渉の問題で基本となるのは,次の関係だよ。

物理が苦手な文子
この関係は分かるわ。

物理が得意な秀樹
この問題の場合の経路差は分かるかな?

物理が苦手な文子
空気層の下面で反射する光の方が,Dの往復分,つまり2Dだけ距離が長くなっているのよね。

物理が得意な秀樹
そう,経路差は2Dだ。それで,さっきの干渉の基本の式なんだけど,反射があるときは注意が必要なんだよね。

■「反射」があるときは注意!

物理が苦手な文子
反射があるときは位相が反転するとか,反転しないとかを考えなきゃダメなのね。

物理が得意な秀樹
そうだね。反転が1回あると,強めあう条件と弱め合う条件が逆になるんだ。そして反転が2回あると元に戻るんだよね。

物理が苦手な文子
反転があるかどうかは,屈折率で判断するのね。

物理が得意な秀樹
問題文に「屈折率の小さい媒質を進んできた光が,屈折率の大きい媒質との境界面で反射するときは,位相が反転(\piだけ変化)する。」とあるね。

物理が苦手な文子
「空気に対するガラスの屈折率は1.5である。」と問題文にあるわ。

物理が得意な秀樹
普通は「空気の屈折率が1,ガラスの屈折率が1.5」とするんだけどね。大切なのは,ガラスのほうが屈折率が大きいということだね。

物理が苦手な文子
そうすると,空気層の上面で反射する光は位相が反転しないけど,空気層の下面で反射する光は位相が反転するのね。

物理が得意な秀樹
そういうことになるね。

物理が苦手な文子
ということは,位相が反転するのは1カ所なので,干渉によって強めあう条件と弱め合う条件が入れ替わるのね。今は明線の位置について考えていたので,強めあう条件を書くと,

 

物理が得意な秀樹
そこまではいいね。次はDを求めるんだ。

■比を使って関係を表す

物理が苦手な文子
Dを求めるのは,どうすればいいの?

物理が得意な秀樹
直角三角形の辺の比で式が立てられないかな?

 

物理が苦手な文子
なるほど,こうやって描いてみるとなんとなく分かりますね。こんな式になりますね。

    $$L:a=x_m:D$$

    $$D=\frac{ax_m}{L}$$

物理が得意な秀樹
いいね。これをさっきの条件式に入れて計算してみるよ。

    $$2\times \frac{ax_m}{L}=(m+\frac{1}{2})\lambda$$

    $$x_m=(m+\frac{1}{2})\frac{L\lambda}{2a}$$

物理が苦手な文子
なるほど。これでx_mが分かったのね。でも求めたいのは明線の間隔dなのよね。

■dとxmの関係

物理が得意な秀樹
明線の間隔dはどこでも等間隔なので,こう表すことができるよ。

    $$d=x_{m+1}-x_m$$

物理が苦手な文子
なるほど,数学の漸化式みたいな考え方ね。あとは,x_mの式を使えばいいのね。

    \begin{eqnarray*}d&=&x_{m+1}-x_m\\&=&(m+1+\frac{1}{2})\frac{L\lambda}{2a}-(m+\frac{1}{2})\frac{L\lambda}{2a}\\&=&\frac{L\lambda}{2a}\end{eqnarray*}

物理が得意な秀樹
そういうことだね。答えは②だ。問2にいこう。

 

 

■やっぱり「反射」に注目しよう

物理が苦手な文子
真下から観察する問題って,あんまり見たことない。

物理が得意な秀樹
問題としては,ときどきあるかな。ポイントは,位相が反転する反射が何回あるかを数えることだよ。干渉する2つの光の経路は,図を見れば分かるよね。

物理が苦手な文子
1つは1度も反射せずに,まっすぐ透過する光ね。もう1つは,空気層の下面で反射して,次に上面で2回目の反射をして真下に抜けてくる光ね。位相の反転はこんな感じね。

物理が得意な秀樹
ということは,位相の反転が2回起こるということだね。干渉の条件はどうなるかな?

物理が苦手な文子
位相の反転が2回ということは,反転が無い場合と同じだから,こうね。

物理が得意な秀樹
そうだね。これって,さっきの真上から観察したときと逆になっているよね。

物理が苦手な文子
干渉条件が逆ということは,どういうこと?

物理が得意な秀樹
強めあう条件と,弱め合う条件が逆になるんだから,上から見たときに明線だと,同じ位置でしたから見たときは暗線になるということだね。

物理が苦手な文子
というとは,空欄アには「暗線」が入るのね。

■屈折率の大小関係を確認

物理が得意な秀樹
そうだね。次は,空気層のところを屈折率nの液体で満たしたときだね。

物理が苦手な文子
液体で満たすと,何が変わるの?

物理が得意な秀樹
まず,位相が反転する反射の数が変わるかもしれないね。屈折率の大小関係で位相が反転するか,しないかが決まるからね。

物理が苦手な文子
液体の空気に対する屈折率nの大きさは,
1<n<1.5
となっているわね。ということは,液体の屈折率はガラスよりも小さいということね。

物理が得意な秀樹
そうだね。ということは?

物理が苦手な文子
ということは,屈折率がガラスより小さいというのは空気と同じなので,位相の反転も空気と同じね。

物理が得意な秀樹
そうだね。位相の反転については,同じだね。

■屈折率が異なると波長が変わる

物理が苦手な文子
それじゃあ,液体を満たしたことで何も変わらないの?

物理が得意な秀樹
いや,変わるものがあるんだ。光の波長が変わるんだよ。

物理が苦手な文子
波長が変わるの?

物理が得意な秀樹
そう。真空中の光の波長を\lambdaとすると,屈折率nの媒質中の光の波長\lambda 'は,

物理が苦手な文子
この問題では空気中の波長が\lambdaで,空気に対する液体の屈折率がnだけど,いいの?

物理が得意な秀樹
微妙に違うよね。ちゃんと説明するとちょとややこしいけど,全く同じ関係なので,そのままこの波長の関係を使って大丈夫だよ。

物理が苦手な文子
そうなのね。今求めたいのは,真下から見たときの明線の間隔だけど,どうすればいい?

■明線の間隔と暗線の間隔は同じ

物理が得意な秀樹
問1で真上から見たときの明線の間隔を求めたね。

    $$d=\frac{L\lambda}{2a}$$

物理が苦手な文子
真下から見ると,明線と暗線は逆になるのよね。

物理が得意な秀樹
確かに明線と暗線は逆になるんだけど,明線でも暗線でも間隔は同じだよね。

物理が苦手な文子
まぁそうね。

物理が得意な秀樹
この明線の間隔の式を見ると,液体を入れることによって変わる\lambdaが入っているね。

物理が苦手な文子
この\lambdaを変えればいいのね。液体を満たしたときの明線の間隔をd'とすると,

    \begin{eqnarray*}d'&=&\frac{L}{2a}\cdot \frac{\lambda}{n}\\&=&\frac{d}{n}\end{eqnarray*}

物理が苦手な文子
つまり空欄イに入るのは \displaystyle \frac{d}{n}ね。

物理が得意な秀樹
空欄アは「暗線」だったので,答えは⑥だ。