センター2019物理第2問 A「半導体のキャリアとダイオードを含む交流回路」

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n型半導体,p型半導体とキャリア

物理が苦手な文子
ダイオードの問題ね。ダイオードって,確か一方向にしか電流を流さないのよね。
物理が得意な秀樹
問題文にもAからBには電流が流れるけど,逆向きには流れないと書いてあるね。
物理が苦手な文子
ただ,それ以上のことはよく分からないから,どうすればいいの?
物理が得意な秀樹
なぜダイオードには一方向にしか電流が流れないのか,その原理を知らないと解けない問題だね。
物理が苦手な文子
ダイオードの原理って,どういうことなの?
物理が得意な秀樹
ダイオードを構成している半導体には「n型半導体」と「p型半導体」の2種類があるんだ。
物理が苦手な文子
2種類あるのね。その2種類は何が違うの?
物理が得意な秀樹
電流の担い手である「キャリア」が違うんだ。
物理が苦手な文子
問題文には「担い手」という言葉があるけど,そもそも「担い手」って何?
物理が得意な秀樹
そうだね,「電流の担い手」っていうのは「電流を運んでいるもの」という意味だ。
物理が苦手な文子
だったら,「電流を運んでいるもの」と言えばいいじゃない。
物理が得意な秀樹
例えば金属だったら,「電流の担い手」は自由電子だね。自由電子って「もの」ではないとも言えるので,厳密には「電流を運んでいるもの」という表現だと適切ではないとも言えるんだ。
物理が苦手な文子
だから『もの』ではなく,『担い手』としたのね。
物理が得意な秀樹
「担い手」を英語では「キャリア」と言うんだ。
物理が苦手な文子
金属を流れる電流の担い手が自由電子なのはいいけど,半導体中を流れているのは自由電子じゃないの?
物理が得意な秀樹
その電流の担い手が「n型半導体」と「p型半導体」で違うんだ。「n型半導体」は自由電子,「p型半導体」は正孔(ホール)なんだ。
物理が苦手な文子
「正孔(ホール)」って何?
物理が得意な秀樹
正孔(ホール)っていうのは,電子の抜けた穴みたいなものなんだけど,正の電荷を持っている粒子として扱えるんだ。その粒子がp型半導体中を流れているということだ。
物理が苦手な文子
電子の抜けた穴なのに,粒子なの?
物理が得意な秀樹
そう考えて問題がないということだ。例えば,水中の泡を水の抜けた穴だと考えてみるのはどうだろう?穴に水が落ちていると考えるよりも,泡が上昇しているって考えるでしょ。
物理が苦手な文子
そうか,泡が上昇しているとしか考えたことがなかったわ。確かに泡の中に水が落ちているとも考えられるのね。
物理が得意な秀樹
あくまでもイメージだけど,空気の泡に相当するのが正孔(ホール)ね。
物理が苦手な文子
「n型」「p型」っていうのは何?
物理が得意な秀樹
自由電子は負の電荷を持っているので,negativeの「n」,正孔(ホール)は 正の電荷を持っているので,positiveの「p」を用いて表しているんだ。
物理が苦手な文子
なるほど。それじゃあこの問題では,半導体Aと半導体Bはどちらかがn型半導体で,どちらかがp型半導体ということね。

ダイオードの原理

物理が得意な秀樹
そうだね。このp型半導体とn型半導体をくっつけることを「pn接合」と言って,出来上がったものがダイオードなんだ。
物理が苦手な文子
この問題では,半導体Aから半導体Bへの向きだと電流は流れたのね。
物理が得意な秀樹
この「pn接合」では,「pからnに電流が流れる」ということを覚えておくといいね。
物理が苦手な文子
pからnに電流が流れるということは,半導体Aがp型半導体で,半導体Bがn型半導体ということね。
物理が得意な秀樹
そういうことだ。一応原理を説明しておこう。
物理が得意な秀樹
p型半導体側に電池の正極,n型半導体側に電池の負極を接続すると,図のようにキャリアが接合面に移動し,接合面付近で電子と正孔(ホール)が合体して消滅する。また,同時に電池からはそれぞれのキャリアが供給されるので,電流が流れる。
物理が苦手な文子
まぁなんとなく分かるわ。
物理が得意な秀樹
一方,ダイオードの向きを変えると,キャリアはそれぞれ接合面から離れるように移動して,接合面付近にキャリアのない「空乏層」が形成される。
物理が苦手な文子
キャリアがないから「空乏層」っていうこと?
物理が得意な秀樹
その通り!これだとキャリアが供給されることはないので,電流は流れないんだ。
物理が苦手な文子
なるほど。分かった気がするわ。問題に戻ると,半導体Aがp型半導体だからキャリアは正孔(ホール),半導体Bがn型半導体だからキャリアは電子ということね。
物理が得意な秀樹
そうだね。答えは③だ。

回路の電位と回路を流れる電流

物理が苦手な文子
交流の問題は苦手だわ。
物理が得意な秀樹
ダイオードと交流が絡むと,とても難しく感じるよね。
物理が苦手な文子
何から考えれば良いのか,全然分からないわ。
物理が得意な秀樹
考えるのは,点Pを流れる電流だよね。ちょっと電流を書き込んでみよう。
物理が得意な秀樹
図の点Pを流れる電流をIとして,図の上の段の抵抗を流れる電流をi_1,中央の段を流れる電流をi_2とすると,I=i_1+i_2だよね。
物理が苦手な文子
確か,電流の関係はキルヒホッフの第1法則ね。
物理が得意な秀樹
その通り。とりあえず,i_1i_2に分けて考えてみよう。上の段と中央の段は並列なので,かかっている電圧は同じだよね。まずは上段ね。
物理が苦手な文子
こんなシンプルな回路になっちゃうの?
物理が得意な秀樹
真ん中の段を取り除くとシンプルだね。与えられているグラフは,点aに対する点bの電位の時間変化だね。
物理が苦手な文子
電位もよく分からないわ。
物理が得意な秀樹
電位って分かりにくい概念かもしれないけど,電気回路の電位は簡単なんだ。ちょっと電位の考え方をまとめておくよ。
物理が苦手な文子
なんとなくは分かるんだけど,この問題の場合はどうなるの?
物理が得意な秀樹
点aに対して点bの方が電位が高いときを考えてみるよ。こんな感じで導線に色をつけてみると分かりやすくなるよ。
物理が苦手な文子
導線でつながっているところは,等電位だから同じ色なのね。
物理が得意な秀樹
そういうこと。
物理が苦手な文子
点aよりも点bの方が電位が高いときは,抵抗も図の左側の方が電位が高くなって,右向きに電流が流れるということか。
物理が得意な秀樹
その通り。つまり,このときは電位の変化に伴ってi_1の向きの電流が流れるんだ。
物理が苦手な文子
ということは逆に点aの方が電位が高ければ逆向きの電流が流れるということね。
物理が得意な秀樹
そうだね。この電流i_1の時間変化のグラフを描いてみるとこんな感じだ。
物理が苦手な文子
問題で与えられている電位のグラフと変わらないわね。
物理が得意な秀樹
縦軸が電流になっただけで,概形は同じだね。
物理が苦手な文子
それじゃあ次は,真ん中の段ね。抜き出すとこんな感じ。
物理が得意な秀樹
そうだね。それじゃあちょっとさっきと同じように,導線部分に色を塗ってみようか。
物理が苦手な文子
点aよりも点bの方が電位が高いときは,こんな感じかな。
物理が得意な秀樹
いいね。問題文に,ダイオードにAからBの向きに電流が流れる時には電圧降下は生じない,とあるのでダイオードの両端は等電位になるね。そして抵抗には右向きに電流が流れる。
物理が苦手な文子
だんだん分かってきたわ。点aの方が電位が高いときは,ダイオードに電流が流れなくなりそうだけど,それでいいの?
物理が得意な秀樹
その通りだ。導線に色を塗ってみるとこんな感じだ。
物理が苦手な文子
なるほど。抵抗には電流が流れないので,抵抗の両端は等電位なのね。ダイオードの両端に電位差が生じているということね。
物理が得意な秀樹
この電流i_2と時間の関係のグラフを描いてみるとどうなるかな?
物理が苦手な文子
電位によって,流れたり流れなかったりするので,こうかな?
物理が得意な秀樹
合ってるよ!それじゃあ,いま求めたいのは点Pを通る電流I=i_1+i_2なので,2つのグラフを足し合わせればいいね。
物理が苦手な文子
こんな感じになるわね。
物理が得意な秀樹
そういうことだね。答えは⑤だ。
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